現在では、市販されている化粧品やスキンケア商品の多くが、石油由来の合成成分を使って作られています。
私は数年前にかなり肌の調子を悪化させたこともあって、今では手作りの化粧品や、石鹸で落ちるコスメなどを使っています。
でも、その前は石油由来の成分が使われた化粧品を当たり前のように使っていました。
よくよく考えてみると、石油から化粧品が作れるというのは、不思議ですよね。
そこで、今回の記事では、石油からどうやって化粧品やコスメなどに使う成分が作られるのかをまとめていきたいと思います。
掘り出した石油を精製してナフサを取り出す
油田から掘り上げられた石油は、そのままでは燃料にも使えませんし、化粧品や洗剤にも使えません。
そこでまず、精製をします。
簡単に言うと、『分留(ぶんりゅう)』をします。
石油に含まれる成分はたくさんあるのですが、それぞれ沸点が違うんですね。蒸留する時の温度を変えることで、特定の成分だけを取り出すことができます。これを分留といいます。
石油を分留すると「ガス」「ガソリン」「ナフサ」「軽油」「灯油」「重油」など、それぞれ取り出すことができます。
化粧品や洗剤などに使われている成分のもとになっているのが、ナフサです。
ナフサはこのほかにも、化学肥料や塗料、香料、プラスチック製品などを作るもとにもなっています。
ナフサが化粧品の原料になるまで
ナフサはさらに熱分解して、いくつもの成分に分けられます。
その中でも化粧品に関係しているのが以下の成分です。
・プロピレン
・ベンゼン
・トルエン
・キシレン
よく化粧品の成分として使われる「ポリエチレングリコール(PEG)」は、エチレンの誘導体のことです。
エチレンを酸化させてエチレンオキシドを作り、そこからエチレングリコールを作り、そこからポリエチレングリコールを作ります。
エチレンからは、ポリエチレングリコールだけでなく、エタノールやBG(1,3-ブチレングリコール)、酢酸などが作られます。
※誘導体というのは、ある物質の一部の分子構造だけを、化学反応などによって変化させたもののことをいいます。
プロピレン、イソプレンから作られる合成成分
ナフサから得られたプロピレンの誘導体は、アセトンといって、マニキュアのリムーバーに使われています。
プロピレンからは他にもプロピレングリコール(PG)という、化粧品によく使われる成分も作られます。
PGは植物エキスを抽出するための溶剤としても使われていますが、エキスの溶剤については表示義務がないので、成分表示には書かれていない場合もあります。この場合は○○エキスとだけ表記されます。
ナフサから得られたイソプレンは、主に合成香料のもとになります。
イソプレンを使ってメチルヘプテノンを合成し、メチルヘプテノンを中間体として「シトラール」「シトロネール」「ゲラニオール」「リモネン」などの合成香料を作り出します。
トルエンとキシレンから作られる合成成分
トルエンというのは、シンナーの成分でもあり中毒性があります。
化粧品に使われるトルエンは、マニキュアの溶剤として、マニキュアに使われています。
トルエンから作った『BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)』は、防腐剤として化粧品に使われていました。旧表示指定成分です。
(旧表示指定成分についてはこの記事の末尾で説明しています)
キシレンからは、フタル酸が作られます。
フタル酸からはフタル酸エステルが作られ、ファンデーションやクリーム、乳液などに使われています。
使用感を滑らかにするために使われます。
タール色素も石油由来の成分である
「タール色素」も石油由来の成分です。
昔は石油を精製する際に出る「コールタール」を原料として作っていた色素なので、タール色素と呼ぶのだそうです。
現在は、ナフサ由来の原料から作られています。
タール色素は数多くあるのですが、その中で化粧品に使ってもいいものは89品目だけです。
タール色素も旧表示指定成分です。
商品の全成分のところには、「赤色202号」とか「黄色201号」という書き方で表記されています。
旧表示指定成分とは何か
文章中に何度か『旧表示指定成分』というワードが出てきましたが、これは『体質によってアレルギーなどの皮膚トラブルを引き起こす可能性のある成分のこと』です。
現在では化粧品の全成分を表示しなければいけなくなったので、成分中に旧表示指定成分が入っていても、なかなか見分けがつかなくなってしまいました。
(2001年4月までは、表示指定成分を使っている場合だけ、表示をしなければいけない決まりでした)
一番わかりやすいのがタール色素かなと思います。赤や青、黄などの色に加えて○号と書かれているので、見つけやすいですよね。
タール色素は、最近でもよくアイシャドウやアイブロウ、口紅、チーク、ファンデーションなどのコスメに使われているのを見かけます。